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J Heart Lung Transplant · 2026年8月 · 多施設・二重盲検 · 59名 · 主要評価項目 未達

肺移植後の慢性移植肺機能不全に対する他家骨髄由来MSC点滴の第2相試験、主要評価項目を達成せず

肺移植後の長期予後を左右する慢性移植肺機能不全(CLAD)に対して、他家骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の静脈内投与を調べたオーストラリアの多施設・二重盲検・プラセボ対照の第2相試験の結果が、2026年8月に Journal of Heart and Lung Transplantation 誌に掲載されました。59名が無作為化され、12か月時点の無増悪生存は MSC 群41%、プラセボ群55%で、統計的な差はありませんでした。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

研究情報

掲載誌
The Journal of Heart and Lung Transplantation(2026年8月号)
試験デザイン
多施設、第2相、無作為化、二重盲検(登録上は三重盲検)、プラセボ対照。オーストラリア
登録番号
NCT02709343 ↗(スポンサー: クイーンズランド大学。協力: Isopogen、Cell and Tissue Therapies)
対象
肺移植後6か月以上で、新たに CLAD を発症した18歳以上 59名を無作為化、58名に投与(MSC 27名、プラセボ 31名)。目標は各群41名
介入
他家骨髄由来MSC 2×106 個/kg を静脈内に週2回、2週間(計4回)。対照はプラセボ
主要評価項目
12か月時点の無増悪生存(全死亡と CLAD の進行〔1秒量の10%を超える低下〕の複合)
結果
無増悪生存 MSC 群 41%(11/27)対 プラセボ群 55%(17/31)。相対リスク 0.74(95%信頼区間 0.42〜1.29、p=0.30)。1秒量の低下速度も差なし(差 2.56 ml/週、95%信頼区間 −4.88〜9.99、p=0.50)
有害事象
抄録に記載なし
資金
オーストラリア国立保健医療研究評議会(NHMRC)プロジェクト助成 1103789
利益相反
著者1名が、投与製品の製造に用いた特許を保有する Isopogen 社と関係。他の著者は申告なし

試験の概要

肺移植を受けた患者の多くは、数年のうちに移植した肺の機能が徐々に低下する慢性移植肺機能不全(CLAD)を発症し、これが長期生存の最大の制約になっています。MSC には免疫を調節する作用が報告されているため、発症初期に投与して進行を抑えられるかを調べたのがこの試験です。

参加者は他家骨髄由来MSC群とプラセボ群に1対1で割り付けられ、2週間に4回の点滴を受けました。主要評価項目は12か月時点の無増悪生存で、死亡と肺機能のさらなる低下を合わせた複合指標です。

主な結果

12か月時点で増悪も死亡もなかった参加者の割合は、MSC 群で41%(27名中11名)、プラセボ群で55%(31名中17名)でした。相対リスクは0.74で、95%信頼区間は0.42〜1.29、p 値は0.30です。数値の上では MSC 群のほうが低いものの、統計的な差はありません。

肺機能の低下速度にも差はありませんでした。1秒量は MSC 群で週6.43 ml、プラセボ群で週9.14 ml 低下し、差は週2.56 ml(95%信頼区間 −4.88〜9.99、p=0.50)でした。肺活量の低下速度も同程度です。

読むときの注意点

  • 予定した人数に達していません。 目標は各群41名の計82名でしたが、無作為化されたのは59名です。人数が不足すると、実際に存在する差を検出できないことがあります。したがって「効果がなかった」とも「効果がある」とも断定できません。
  • 数値上は MSC 群が不利ですが、有意差はありません。 信頼区間が1をまたいでおり、悪影響があったとも言えません。
  • 対象は移植後の免疫に関わる病態です。 加齢や変性疾患を対象とした試験とは、期待される作用の仕組みも評価項目も異なります。
  • 投与経路と細胞の種類は「MSC の点滴」に共通します。 他家骨髄由来MSC を体重当たりの用量で静脈内に複数回投与する設計は、他の疾患を対象とした試験とも共通しており、二重盲検で行われた点でこの分野の参考になります。

結果の範囲

この結果が示していること

  • この設計(2×106 個/kg を4回)では、新規 CLAD の12か月後の無増悪生存に、プラセボとの差は示されなかったこと
  • 二重盲検・多施設で行われた MSC 点滴の第2相試験として、否定的な結果が公表されたこと

この結果が示していないこと

  • MSC 点滴に CLAD への効果がまったくないこと(人数が不足しており、検出できなかった可能性が残ります)
  • 他の疾患、他の製品、他の用量での効果
  • 安全性の詳細(抄録に記載がありません)
出典
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