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Gastroenterology · 2026年6月 · 第3相 · 568名 · 主要評価項目 未達

承認後の確認試験で有効性を示せなかった他家脂肪由来MSC製品

クローン病に伴う複雑痔瘻に対する他家脂肪由来間葉系幹細胞製品 darvadstrocel(欧州での製品名 Alofisel、日本では「アロフィセル注」)の第3相確認試験 ADMIRE-CD II の結果が、2026年6月に Gastroenterology 誌に掲載されました。568名を対象とした二重盲検・プラセボ対照試験で、24週時点の複合寛解率は実薬群48.8%、プラセボ群46.3%と差がなく、主要評価項目を達成しませんでした。この製品は2018年に欧州で、2021年に日本で承認されていましたが、欧州では2024年12月に販売承認が撤回されています。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

研究情報

掲載誌
Gastroenterology(2026年6月号)
試験デザイン
第3相、無作為化、二重盲検(登録上は四重盲検)、プラセボ対照。欧州、イスラエル、北米
登録番号
NCT03279081 ↗(スポンサー: TiGenix S.A.U.。同社は2018年に武田薬品工業の傘下)
対象
既存治療で効果が不十分なクローン病の複雑痔瘻 568名(実薬283名、プラセボ285名)
介入
darvadstrocel(他家脂肪由来の培養MSC 1.2×108 個)を病変部に局所投与。両群とも外科的処置(掻爬と内口閉鎖)を併用。静脈内投与ではない
主要評価項目
24週時点の複合寛解(治療した外口すべての閉鎖と、2 cm を超える膿瘍がないこと)
結果
複合寛解率 48.8%(138/283)対 46.3%(132/285)。差 2.4%(95%信頼区間 −5.8〜10.6、p=0.571)。主な副次評価項目も有意差なし
有害事象
治療下で発現した有害事象は 73.0% 対 73.4% で同程度。新たな安全性上の懸念は確認されず
利益相反
PubMed の書誌情報に開示文の収録なし。スポンサーは製造販売元の子会社

製品と試験の経過

darvadstrocel は、健康な成人の脂肪組織から採取して培養した他家MSCを、クローン病に伴う複雑痔瘻(肛門周囲に複数の瘻孔ができる合併症)の病変部に注射する製品です。最初の第3相試験 ADMIRE-CD(212名)で、24週時点の複合寛解率にプラセボとの差15.8ポイントが示され、欧州医薬品庁は2018年にこの結果を根拠として承認しました。

承認時の試験規模が小さく効果も中程度だったため、欧州医薬品庁は有効性を確認する追加試験を求めました。それが今回の ADMIRE-CD II で、対象を北米にも広げ、568名を登録して2017年から2023年まで行われました。

主な結果

24週時点の複合寛解率は、実薬群48.8%、プラセボ群46.3%でした。差は2.4ポイントで、95%信頼区間は −5.8〜10.6、p 値は0.571です。主な副次評価項目である臨床的寛解(p=0.515)と寛解までの時間(p=0.374)にも有意差はありませんでした。

安全性については、治療下で発現した有害事象の割合は両群で同程度で、新たな安全性上の懸念は確認されていません。効果がないと判断された理由は、危険だったからではなく、プラセボに対する上乗せを示せなかったからです。

承認と撤回の経過

時期出来事
2018年3月欧州で承認(ADMIRE-CD の結果を根拠)
2021年9月日本で製造販売承認(武田薬品工業。同社にとって国内初の再生医療等製品、国内初の他家脂肪由来MSC製品)
2023年ADMIRE-CD II の主要評価項目未達が判明
2024年12月13日武田薬品が欧州での販売承認の自主的な取り下げを表明。欧州委員会が同日付で承認を撤回。同社は「承認されている他の国の規制当局とも協議する」と表明
2024年12月17日日本炎症性腸疾患学会が厚生労働省からの情報として会員に周知。「いまのところ本邦における取扱いについては変わりはありません」
2026年1月武田薬品が国内の医療関係者向けに「アロフィセル注」の販売中止を案内(案内文書は医療関係者限定で、当編集部は原文を入手していません)
2026年6月ADMIRE-CD II の論文が Gastroenterology 誌に掲載

読むときの注意点

  • 承認は有効性の最終確定ではありません。 1回目の第3相試験が陽性で承認された製品が、2回目のより大きな試験で再現できなかった例です。承認されているという事実は「その時点で規制当局が有効性の証拠を認めた」ことを意味し、後の試験で覆ることがあります。
  • プラセボ群の寛解率が46.3%と高い点に注目してください。 両群とも外科的処置を受けており、処置だけで多くの患者が寛解に達しています。細胞の上乗せ効果を検出するには、この背景を超える必要がありました。
  • 局所投与の製品で、対象疾患も限定されています。 静脈内投与のMSCや、他の疾患を対象とした製品の有効性について、この試験は何も示しません。
  • 1回目の試験が「間違っていた」とも言えません。 対象患者の背景、施設、標準治療の変化など、2つの試験の結果が異なる理由は複数考えられ、論文の本文で議論されているはずです。

結果の範囲

この結果が示していること

  • darvadstrocel の局所投与は、568名の二重盲検試験で、外科的処置への上乗せ効果を示せなかったこと
  • 安全性の新たな懸念は確認されなかったこと
  • 欧州では有効性が確認できないことを理由に承認が撤回されたこと

この結果が示していないこと

  • 他家脂肪由来MSC全般、あるいはMSC治療全般が無効であること(この製品、この投与法、この疾患に限られた結果です)
  • 静脈内投与のMSC製品の有効性や安全性
  • 日本での承認上の最終的な扱い(販売中止の案内文書の原文を当編集部は入手していません)
出典
この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

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