Nature · 2025年1月 · 前臨床(アカゲザル)とヒト1名 · ドイツ
重い心不全に対して、iPS細胞から作った心筋細胞をゲル状の「パッチ」にして心臓の表面に貼る研究の結果が、2025年1月に Nature 誌に掲載されました。アカゲザルでは移植した組織が最長6か月生着し、心不全モデルで心臓の収縮力と駆出率が改善しました。ヒトでは、進行した心不全の患者1名で移植片が心筋として生着していることが確認されています。ただし、主な結果は動物実験であり、ヒトの有効性を示す試験はこれからです。
このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。
心不全は、心臓が血液を十分に送り出せなくなる病気です。薬で症状を和らげることはできますが、失われた心筋そのものを補う治療はありません。今回の研究では、iPS細胞から心筋細胞と、それを支える間質細胞を作り、ゲル状の薄い組織(人工心筋組織、EHM)にして、弱った心臓の表面に貼りました。
まずアカゲザルで、移植した組織が最長6か月にわたって心臓に残り、細胞の量に応じて心臓の壁が厚くなることを確かめました。心筋梗塞で心不全を起こしたサルでは、移植した部位の収縮力と、心臓全体の血液を送り出す力(駆出率)が改善しました。心配されていた不整脈や腫瘍は見られませんでした。
これらの結果をもとに、ドイツで人を対象とした第1/2相試験が始まっています。論文には、進行した心不全の患者1名で、移植した組織が心筋として生着していたことが示されています。報道によれば、この患者はその後に心臓移植を受けており、取り出した心臓を調べることで生着を確認できました。
心筋細胞を心臓に注射する方法は以前から試されてきましたが、注射した細胞の多くが心臓に残らず、残った細胞が不整脈を起こす懸念もありました。研究チームは、細胞をあらかじめ組織の形に育て、心臓の外側に貼ることで、細胞が留まりやすく、心臓のリズムを乱しにくい方法を目指しました。移植した組織に血管が入り込むことも、組織検査とMRIで確かめています。
ヒトで結果が示された患者の人数
示されたのは移植片の生着で、心機能の改善ではありません。有効性の主な根拠はサルの実験です。
動物実験で機能が改善しても、ヒトで同じ結果が得られるとは限りません。サルの心不全モデルは実験的に作られたもので、長年かけて進行するヒトの心不全とは経過が異なります。一方で、ヒトに近い大型動物で6か月の生着と安全性が確かめられたことは、ヒトの試験へ進む根拠として重要です。ヒトでの有効性は、進行中の第1/2相試験の結果を待つ必要があります。
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