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Lancet · 2024年11月 · 初のヒト試験 · 4名(4眼) · 日本

iPS細胞から作った角膜のシートを4名に移植 1年後、4眼すべてで視力が改善

角膜の表面を保つ幹細胞が失われ、角膜が濁って視力が落ちる病気の患者4名に、他人のiPS細胞から作った角膜上皮の細胞シートを移植した結果が、2024年11月に Lancet 誌に掲載されました。2年間の観察で腫瘍や拒絶反応などの重篤な有害事象はなく、52週時点では4眼すべてで矯正視力が改善しました。ただし、対照群のない4名の初期試験です。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

何が起きた?

目の表面を覆う角膜は、縁(輪部)にある幹細胞が絶えず新しい細胞を送り出すことで透明さを保っています。この幹細胞が病気やけがで失われると、角膜は濁り、視力が大きく落ちます。角膜輪部幹細胞疲弊症と呼ばれるこの状態は、治療が難しい病気の一つです。

大阪大学の研究チームは、他人のiPS細胞から角膜上皮の細胞を作り、薄いシートにして患者の目に移植しました。参加したのは、原因の異なる4名の患者です。2名には低用量の免疫抑制剤を使い、残る2名には使いませんでした。移植後52週と、その後の1年間、有害事象を追跡しています。

52週時点で、4眼すべてにおいて病気の段階が改善し、矯正視力が上がり、角膜の濁りが減りました。2年間の観察で、腫瘍の形成や拒絶反応といった重篤な有害事象は起きていません。

なぜ「他人のiPS細胞」なのか

角膜の幹細胞を失った患者では、本人の目から健康な幹細胞を採ることができません。両目が侵されている場合はなおさらです。他人のiPS細胞をもとに角膜上皮を作れば、患者ごとに細胞を採る必要がなく、あらかじめ品質を確かめた細胞を使えます。一方で他人の細胞には拒絶反応の懸念があるため、この試験では免疫抑制剤を使う2名と使わない2名に分けて、安全性を確かめました。

「4眼すべて改善」をどう読む?

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52週時点で矯正視力が改善した眼の数
ただし4名だけで、対照群はありません。改善の大きさには患者による差がありました。

論文は、患者1・2(免疫抑制剤あり)のほうが、患者3・4(免疫抑制剤なし)より良好な結果だったと述べています。免疫抑制剤の有無による違いなのか、原因となった病気の違いなのかは、この人数では判断できません。海外の科学誌の報道では、1名の改善が持続しなかったとも伝えられています。1年を超えた視力の推移は、論文の本文と今後の報告で確認する必要があります。

まだ分からないこと

  • 人数が4名です。 有効性の大きさや、どのような患者に向くかは判断できません。
  • 対照群がありません。 従来の治療法との比較は行われていません。
  • 1年を超えた効果の持続は、今後の報告を待つ必要があります。
  • 角膜という限られた部位への移植です。 他の病気や、点滴で投与する細胞治療に読み替えることはできません。

研究情報

掲載誌
Lancet(オンライン公開 2024年11月7日、2024年11月16日号)
試験デザイン
初のヒト試験、非無作為化、単群、非盲検。日本(大阪大学医学部附属病院)
登録番号
UMIN000036539 ↗(完了)
対象
角膜輪部幹細胞疲弊症の患者 4名(4眼)。44歳女性、66歳男性、72歳男性、39歳女性。登録は2019年6月〜2020年11月
介入
他家(HLA不一致)のヒトiPS細胞から作った角膜上皮細胞シートを患眼に移植。2名は低用量のシクロスポリンを併用、2名は免疫抑制なし
主要評価項目
安全性(有害事象)。52週の追跡と、その後1年間の安全性観察
結果(安全性)
52週で有害事象 26件(治療眼で軽度18件・中等度1件、眼以外の軽度7件)、追加の1年で9件。腫瘍形成や臨床的な拒絶反応などの重篤な有害事象は2年間なし
結果(副次)
52週時点で4眼すべてにおいて病期の改善、矯正視力の向上、角膜混濁の軽減。角膜上皮欠損、自覚症状、QOLスコア、血管新生は多くが改善または不変。効果は患者1・2のほうが患者3・4より良好
資金
日本医療研究開発機構(AMED)、文部科学省ほか
利益相反
著者の1名が RAYMEI 社から研究費を受け、同社の株主(有効性・安全性の評価には関与せず)。著者の1名は試験完了後に同社の社員。利益相反管理計画を認定委員会が承認
注意
対照群がなく4名の初期試験。より大規模な臨床試験が計画されている段階です

結果の範囲

この結果が示していること

  • 他人のiPS細胞から作った角膜上皮細胞シートを4名に移植した、世界で初めての報告であること
  • 2年間の観察で腫瘍形成や拒絶反応などの重篤な有害事象がなかったこと
  • 52週時点で4眼すべての矯正視力と角膜の濁りが改善したこと

この結果が示していないこと

  • この治療で角膜の病気が治ること(4名の初期試験で、対照群がありません)
  • 従来の角膜移植より優れていること
  • iPS細胞を用いる他の治療や、点滴による細胞治療に同じ結果が当てはまること
出典
この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

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