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Nature · 2025年4月 · 第1/2相 · 7名(50〜69歳) · 日本

iPS細胞から作ったドーパミン神経のもとになる細胞を7名の脳へ移植 6名中4名で運動症状のスコアが改善

パーキンソン病の患者7名に、他人のiPS細胞から作ったドーパミン神経のもとになる細胞を脳の両側へ移植した試験の結果が、2025年4月に Nature 誌に掲載されました。24か月の追跡で重篤な有害事象はなく、移植した細胞は生き残ってドーパミンを作り、腫瘍にはなりませんでした。運動症状のスコアは、評価した6名のうち4名で改善しました。ただし、対照群のない7名の初期試験です。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

何が起きた?

パーキンソン病は、脳の中でドーパミンを作る神経細胞が減っていくことで、手足のふるえや動きにくさが起こる病気です。薬でドーパミンを補う治療はありますが、失われた神経細胞そのものを補う治療はありません。今回の試験では、他人のiPS細胞から「ドーパミン神経のもとになる細胞」を作り、患者の脳の両側へ移植しました。

参加したのは50〜69歳の患者7名で、細胞の量が異なる2つの群に分かれました。24か月の追跡で重篤な有害事象はなく、73件の軽度から中等度の有害事象が報告されました。画像では移植した細胞が過剰に増える様子はなく、ドーパミンの合成能を測るPET検査では、移植部位の値が平均で44.7%上がりました。運動症状のスコアは、評価した6名のうち、薬が切れている状態で4名、薬が効いている状態で5名が改善しました。

なぜドーパミン神経の「もと」を移植するのか

成熟した神経細胞は移植しても生き残りにくいため、研究チームは、移植後に脳の中で成熟してドーパミン神経になる一歩手前の細胞(前駆細胞)を使いました。iPS細胞は、免疫の型(HLA)が多くの日本人と一致しやすいドナーから作られたものを用い、免疫抑制剤はタクロリムス1種類だけで済ませています。移植後の免疫反応が問題にならなかったことは、同じチームが別の論文で報告しています。

「6名中4名で改善」をどう読む?

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薬が切れた状態で運動症状のスコアが改善した人数
7名のうち有効性を評価できた6名が対象です。対照群はありません。

6名の平均では、薬が切れた状態のスコアが9.5点(20.4%)、薬が効いた状態で4.3点(35.7%)改善しました。一方で、パーキンソン病の症状は日によって変動し、治療への期待による改善(プラセボ効果)も大きい病気として知られています。このため、対照群のない試験では、スコアの改善が細胞によるものだと断定できません。PET検査でドーパミンの合成能が上がったことは、移植した細胞が働いている裏付けになりますが、これも症状の改善と直結するとは限りません。海外の科学誌も、この結果を慎重に読むよう論評しています。

まだ分からないこと

  • 人数が7名です。 効果の大きさや、どのような患者に向くかは判断できません。
  • 対照群がありません。 自然な変動やプラセボ効果と分けることができません。
  • 追跡は24か月です。 移植した細胞が長期にどう働くか、遅れて現れる副作用がないかはこれからです。
  • 脳への外科的な移植です。 点滴による細胞治療や、他の病気に読み替えることはできません。

研究情報

掲載誌
Nature(オンライン公開 2025年4月16日、2025年5月号)
試験デザイン
第1/2相、非盲検、単群、用量2群。日本(京都大学医学部附属病院)
登録番号
jRCT2090220384 ↗
対象
パーキンソン病の患者 7名(50〜69歳)
介入
他家iPS細胞(HLAホモ接合ドナー由来)から作ったドーパミン神経前駆細胞を、脳の両側の被殻へ移植。免疫抑制はタクロリムス単剤
主要評価項目
安全性と有害事象(24か月)
結果(安全性)
重篤な有害事象なし。軽度〜中等度の有害事象 73件。画像上、移植片の過剰増殖なし
結果(副次)
有効性を評価した6名のうち、運動症状スコア(MDS-UPDRS パートIII)の薬効オフ時で4名、オン時で5名が改善。6名の平均変化はオフ時 −9.5点(20.4%)、オン時 −4.3点(35.7%)。重症度分類(Hoehn-Yahr)は4名で改善。被殻のドーパミン合成能(18F-DOPA PET)は 44.7% 増加し、高用量群で増加が大きい。その他の指標の変化は小さい
注意点(薬)
抗パーキンソン病薬は原則維持されたが、調整が必要になった例ではジスキネジア(不随意運動)が増加
資金・利益相反
著者3名が住友ファーマから共同研究費を受領。著者1名は同社の社員。他に画像機器メーカーからの研究費(論文の開示より)
注意
対照群のない7名の初期試験。パーキンソン病では症状の自然な変動とプラセボ効果が大きいことが知られています

結果の範囲

この結果が示していること

  • 他人のiPS細胞から作ったドーパミン神経前駆細胞を、パーキンソン病の患者7名の脳へ移植した第1/2相試験であること
  • 24か月で重篤な有害事象がなく、移植細胞が腫瘍化せずドーパミンを産生したこと
  • 有効性を評価した6名のうち4名で、薬が切れた状態の運動症状スコアが改善したこと

この結果が示していないこと

  • この治療でパーキンソン病が治ること、または進行が止まること
  • 自然な変動やプラセボ効果を超える効果があること(対照群がありません)
  • 他の細胞や、点滴による細胞治療に同じ結果が当てはまること
出典
  • Sawamoto N, Doi D, et al. Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson's disease. Nature. 2025;641:971-977. DOI: 10.1038/s41586-025-08700-0. PubMed 40240591 ↗
  • Morizane A, et al. Control of immune response in an iPSC-based allogeneic cell therapy clinical trial for Parkinson's disease. Cell Stem Cell. 2025. DOI: 10.1016/j.stem.2025.07.012. PubMed 40834856 ↗(免疫抑制と免疫反応に関する同じ試験の報告)
  • 試験登録: jRCT2090220384 ↗
  • 海外報道の参考: Nature news(2025年4月) ↗。結果を慎重に読むよう論評しています
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このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

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