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Cell Stem Cell · 2026年3月 · 無作為化・プラセボ対照 · 148名

フレイルのある高齢者を対象とした他家骨髄由来MSCの第2b相試験の結果

米国の Longeveron 社が開発している他家骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)「laromestrocel」について、フレイルのある高齢者148名を対象とした無作為化・プラセボ対照・用量漸増の第2b相試験の結果が、2026年3月に Cell Stem Cell 誌に掲載されました。主要評価項目である6分間歩行距離は、9か月時点でプラセボとの差が統計的に有意でした。事前に登録された評価時点である6か月時点では、有意水準に達していません。

この記事について

このページは、海外を含む幹細胞研究の論文・臨床試験・報道を日本語で紹介する記事です。紹介する試験の結果は、その試験で用いられた細胞製品・投与方法・対象者に限られ、他の製品や当社がご案内する治療の効果を示すものではありません。当社は紹介する研究・製品に関与していません(関与がある場合は記事内に明記します)。このページでは治療のご案内は行っていません。

研究情報

掲載誌
Cell Stem Cell(2026年3月5日号。オンライン公開は2026年2月25日)
試験デザイン
無作為化、盲検(登録上は三重盲検)、プラセボ対照、用量漸増、第2b相。米国
登録番号
NCT03169231 ↗(スポンサー: Longeveron Inc.。開始 2017年7月、完了 2021年9月)
対象
歩行が可能なフレイルのある高齢者 148名(登録上の実登録は150名)
介入
他家骨髄由来MSC(laromestrocel)の静脈内投与。複数の用量群とプラセボ群の5群
主要評価項目
6分間歩行距離(6MWT)のベースラインからの変化(プラセボとの比較)。登録時に定めた評価時点は投与後180日
結果
9か月時点: +63.4 m(95%信頼区間 17.1〜109.6、p=0.0077)。6か月時点: +41.3 m(95%信頼区間 −2.4〜84.9、p=0.0635)。用量と時間に依存した増加と報告
有害事象
抄録には安全性の記載がありません
資金
米国国立老化研究所(NIA / NIH)の助成。試験のスポンサーは Longeveron 社
利益相反
最終著者(J.M. Hare)は Longeveron 社の最高科学責任者、取締役で、同社の株式を保有。ライセンスされた知的財産の共同発明者。マイアミ大学も同社の株式を保有(論文の開示より)

試験の概要

フレイルは、加齢に伴って身体の予備力が低下し、転倒や入院などの不利益が起こりやすくなる状態を指します。確立された薬物療法はありません。この試験は、健康なドナーの骨髄から培養した他家MSCを静脈内に投与し、身体機能と本人が報告する健康状態が変わるかどうかを調べたものです。

対象は歩行が可能なフレイルのある高齢者で、148名が解析されました。参加者は複数の用量群とプラセボ群に無作為に割り付けられ、投与後の6分間歩行距離の変化を主要評価項目としています。ClinicalTrials.gov の登録では、主要評価項目の評価時点は投与後180日と定められています。

主な結果

抄録によると、6分間歩行距離はプラセボ群と比べて用量と時間に依存して増加しました。9か月時点の差は63.4 mで、95%信頼区間は17.1〜109.6 m、p値は0.0077でした。6か月時点の差は41.3 mで、95%信頼区間は −2.4〜84.9 m、p値は0.0635です。

歩行距離の増加は、本人が報告する身体機能スコア(PROMIS Physical Function)と相関していました。また、用量が高いほど血中の可溶性TIE2(血管の安定に関わる受容体の分解産物)が低下しており、著者らはこれを治療反応性の候補バイオマーカーとしています。

読むときの注意点

  • 事前に登録した評価時点では有意差がありません。 登録上の主要評価項目は投与後180日(約6か月)の6分間歩行距離で、この時点の p 値は0.0635です。9か月時点の結果は統計的に有意ですが、臨床試験の読み方としては、事前に定めた時点で達成できなかった主要評価項目を別の時点で評価したものは、探索的な結果として扱うのが標準です。
  • どの用量で差が出たかは抄録に書かれていません。 用量群ごとの結果、投与回数、投与した細胞数は本文で確認する必要があります。
  • 第2b相の試験です。 有効性を確認するための第3相試験の結果ではありません。
  • 開発企業の関係者が著者に含まれます。 最終著者は同社の役員で株式を保有しています。企業が関与する試験で結果が良く出やすい傾向は複数の分野で報告されており、それ自体が不正を意味するものではありませんが、独立した再現が必要である理由の一つです。
  • 安全性の記載が抄録にありません。 有害事象の内訳は、この記事の情報源である抄録には含まれていません。

結果の範囲

この結果が示していること

  • 他家骨髄由来MSCの静脈内投与を、フレイルのある高齢者に対して無作為化・盲検・プラセボ対照で試験したこと
  • 9か月時点の6分間歩行距離に、プラセボ群との統計的に有意な差があったこと
  • 可溶性TIE2の低下が用量に依存していたこと

この結果が示していないこと

  • 事前に登録した6か月時点で、主要評価項目が達成されたこと(達成されていません)
  • この結果が他の骨髄由来MSC製品や臍帯由来MSC製品に当てはまること(製品ごとに細胞の性質と製造法が異なります)
  • 要介護度や寿命など、抄録に記載のない指標への影響
  • 長期の安全性(追跡は9か月までです)
出典
  • Ruiz JG, Oliva AA, Ramdas KN, et al. Randomized phase 2b dose-escalation trial of stem cell therapy with laromestrocel for aging frailty. Cell Stem Cell. 2026 Mar 5. doi:10.1016/j.stem.2026.01.017 ↗ · PubMed 41747733 ↗
  • ClinicalTrials.gov 登録情報 NCT03169231 ↗(主要評価項目の評価時点、スポンサー、登録人数を確認)
この記事について

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